それがフィンランド航空(通称:フィンエアー)
その親日国である所以とは、
新渡戸稲造・・彼は、第一次世界大戦後の1920年に発足した国際連盟の事務次長に就任。その任期中に、スウェーデンとフィンランドの間で起こった領土問題を、「新渡戸裁定」と呼ばれる創造的な手法で解決に導いたとされている。
領土問題の舞台は、スウェーデンとフィンランドの間にある約6700の島からなるオーランド諸島だ。
この諸島は、複雑な歴史をもっている。もともとフィンランドの一地方だったそうだが、1155年にスウェーデンがフィンランドを征服して以降、地理的にも近いスウェーデンへの帰属意識が強まったという。ところが、1809年にスウェーデンがロシアとの戦争に敗北して、フィンランドとオーランド諸島がロシアに割譲される。
そして、第一次世界大戦が始まるとロシアはオーランドの要塞化を開始。スウェーデンに脅威を与えることになる。しかし、1917年のロシア革命を機に、フィンランドがロシアからの独立を勝ち取るとともに、オーランド諸島ではフィンランドから離れて、スウェーデンへの帰属を求める運動が活発化。スウェーデンとフィンランドの間で、オーランド諸島の帰属問題が先鋭化したのだ。
オーランド諸島は両国の間に存在するだけに、安全保障の観点からも両国間は強い緊張関係に陥ったに違いない。そして、当事者同士の交渉が暗礁に乗り上げた結果、誕生間もない国際連盟に裁定を託すことになったのだ。
全員が「損」をして、“win-win”となる
では、この困難な問題をどう解決したのか?
「新渡戸裁定」の核心をシンプルに表現するとこうなる。
「フィンランドはオーランド諸島の統治権をもつ。しかし、オーランド諸島の公用語はスウェーデン語。そして、オーランド諸島の自治権を保証する」。さらに、帰属問題が解決したのち、国際連盟の主導のもと、オーランド諸島の「非武装・中立化」が決定。現在に至る大枠の体制が固まることになる。
実に見事な裁定だと思う。
スウェーデンはオーランド諸島の統治権を獲得することができず、オーランド諸島の望みも叶わなかった。フィンランドも統治権は維持したものの、オーランド諸島に独立国並みの自治権を認めざるを得なかった。いわば、三者とも「損」をしたということだ。
しかし、これは同時に“win-win”の解決策でもある。オーランド諸島が「非武装・中立化」されたことで、スウェーデンとフィンランドは安全保障上の問題をクリアすることができたはずだ。しかも、オーランド諸島は、スウェーデン文化に基づいた地域運営をする権利を獲得することができた。つまり、三者ともに「目的」を達成することができたわけだ。
現在でも、新渡戸は、スウェーデン、フィンランド、オーランド諸島の人々から感謝されていると聞くが、それも当然のことではないだろうか。
もちろん、あくまで彼は事務次長。この裁定を主導したとまでは言えないかもしれないが、事務方の人間として、解決策に知恵を絞り、関係国との交渉に走り回ったに違いない。だからこそ、「新渡戸裁定」と呼ばれているのだろう。
村松社長
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