ロイヤルホテル<9713> 「リーガロイヤルホテル大阪」が売却された懐事情(下)

こうした資金繰りの問題を解決し、大型改装を進めていくために決断したのがリーガロイヤルホテル大阪の譲渡だった。今後、BGOが135億円を拠出し、同ホテルの大型改装を行う。具体的には、客室や宴会場、レストランなどの全面刷新を行う予定だ。

■大型改装以外の成長戦略も

 大型改装以外にも、2つの成長戦略を打ち出した。

 1つ目がリーガロイヤルホテル大阪でのソフトブランド契約だ。改装終了後、同ホテルは、イギリス・ホテル運営会社大手のインターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)とソフトブランド契約を締結する。この契約によって、IHGグループの会員販売チャネルからの予約が可能となる。ソフトブランド契約の場合、見返りとして売り上げの一部を契約先に支払うのが一般的だ。

 IHGグループの会員プログラム「IHG One Rewards」は全世界で1億人以上登録者がおり、ソフトブランド契約によって会員からの予約が期待できる。「客室の30~40%くらいは、当社からはアプローチできなかったIHG経由のインバウンド客に泊まってもらえるのではないか」と山中氏は推測している。

 もう1つの成長戦略が、出店の強化だ。ホテルは、1施設当たりの売り上げが限られているため、出店は重要な意味を持つ。ロイヤルホテルは今後、BGOが買収したホテルへの運営受託について優先交渉権を得る見通しだ。

 BGOは、「今後3000億円超の資金をホテルアセットに投じることを計画しております」と発表しており、山中氏によればすでに3軒のホテル運営受託の依頼を受けているという。

 ただ、出店の強化にあたっては人材の育成が大きな課題となってくる。出店増加のためには、ホテルの運営ノウハウを持つ総支配人が必要だ。損益の計算はもちろん、ホテルを所有する不動産オーナーとの会話や現場の管理など多くのスキルが必要となる。

 ロイヤルホテルをはじめとした国内勢は、接客スキルでは定評がある一方で、運営ノウハウは外資系に劣っている。

 人材育成と同時に、待遇改善も必須だ。ホテルが開業ラッシュを迎えているいま、総支配人クラスの人材は争奪戦となっている。外資系ホテルの総支配人ともなれば、年収1000万円も一般的。他方、ロイヤルホテルの平均年収は、332万円(41.3歳)にとどまっている。これでは優秀な人材を育成したとしても外資系に引き抜かれてしまう。

 改装や万博特需によって収益の改善が予想されるロイヤルホテルだが、さらなる成長を遂げるためには、人材育成と待遇改善が重要となるだろう。

(星出 遼平)(株)東洋経済新報社

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村松社長

旅行産業界に身を置いてはや45年。シンガポール航空社の日本でのB2Bリーディングカンパニーから京都の制御機器メーカー傘下旅行社を経て起業して以来早くも28年目に入りました。このコロナ禍で本当の旅行情報を発信するために旅行WEBマガジンを令和3年に立ち上げる。専門は海外の出張など。趣味:散歩ついでのお地蔵さん・神社お詣り、銭湯巡り、落語鑑賞、映画鑑賞。